現場を離れて半年ほどは、野球は見なかったという小笠原道大。今は解説や野球教室に加え、苦手だった講演にも挑戦しているし、ゴルフも旅も楽しみたい。新しい経験を重ねる今の暮らしと、野球を通してこれからやっていきたいこと。その率直な思いを聞いた。
——現場を離れて、野球との距離感は変わりましたか?
小笠原:半年ぐらいは何にも関わりたくなかったというか、別にいいやと、何も考えずに。子どもの頃からずっと野球をしていたので、野球の試合も見なかった。でも、今度は違うスタートをしなくちゃいけないから。徐々に、解説、野球教室、臨時コーチだったり、いろんなことをやるようにして。企業の社長さんとかと知り合う機会があって、どんどん積極的に交流して、幅を広げていってます。最近は、そういうことによって仕事が増えていく、みたいな感じです。人とのつながりがあって、縁があって、広がっていく感じを今、楽しんでいます。子どもたちに教えながら、また野球と関わるようにもなりました。試合の解説で現場に行って話したり、経験に基づいてみんなに伝えたり。適度な距離で、多方面に広がって発信しているなという気がしますね。
——今は、これまでにない経験もしているんですね。
小笠原:自分から、苦手な部分に踏み出しているのはあるかな。講演なんて、基本的にしゃべるのが得意ではないし、好きではなかった人間だけどやってみよう、みたいな。もっと楽しみたいことがある、もっとやりたいことがある。そこにはお金も必要で、まだまだ頑張って働かなくてはいけない。逆に今は、目的があるからエネルギッシュでいられるのかなと。
——どんなことを楽しみたいですか?
小笠原:「自由」を楽しみたい。新しい趣味で、今はゴルフとか、時間ができてやると上達してくので、楽しいですね。プライベートでは、海外はハワイしか行ったことがなかったのが、今は仕事で韓国に行ったり、ベトナムに行ったり。行くと、どの国もすごくいいわけです。だから、もっと違うところにも行ってみたい、ヨーロッパも行ってみたいとなる。でも、ヨーロッパ旅行は費用も高いじゃないですか。行くからには、ある程度の期間で行きたいから、そのためには働かなくちゃいけない。講演も、やってみると、ああ、こうなんだなと。じゃあ、もうちょっと勉強して、どうやったら伝わるんだろうと、しゃべり方を勉強しながらやったりしています。
——新しいことへの向き合い方も、変わってきましたか?
小笠原:野球で頑張ってやってきたから、同じように挑戦して進めているというのはあるのかな。最初からうまくいかんでいい、失敗していいという風に徐々に思えるようになってきた。自分が失敗したのが嫌だったりもするし、自分自身の勝手な思い込みもあったりする。でも「別にいいや」と思えるようになると、もっと進められる。結果、よくなったりもするんだなと。いろんな経験をしてきたからこそ、いろんな考え方ができるようになって、多方向から、物事を見られるようにもなりました。だからこそ、前を向いて進めていけるのかなと。まだまだ見えてこないけど、やり残したこともあるし、もっともっといろんなことに挑戦していきたいですね。
——これから、野球を通してやっていきたいことは?
小笠原:野球が楽しいという人を増やすのが大事。そのためには、そういう場所が大事だから、場所を作って、野球をする子どもたちが増えて成長していけば、もっと活性化されていくだろうというビジョンは描いています。自分がその一端になれて、そこにいろんな人が賛同して、大きな力になるというのが、ひとつの望みはありますね。野球から世の中に還元していきたい。若い子たちでも、結果を出している人はいる。だから世代でくくっちゃいけないと思うんです。結局、人なんですよ、個人。「何とか世代だから」、「まだまだ若いから」というくくりで人を判断したくない。ひとりの人の存在を認めてくれたら、本人もうれしいし、やる気になる。「これで間違ってなかったんだ」と。そういうふうに見てあげたいです。
——道大さんにとって、野球のある人生は、どんな人生ですか?
小笠原:現役時代、プレーを見て勇気をもらった、もう一度頑張ってみようかな、もう一度生きてみようかなという手紙をもらったこともあったし、「いつも元気をもらっています」「楽しんでいます」とかね。そういう手紙をもらうと、ああ、やっていてよかった、なんか人のためにもなれているんだなと、嬉しかった。でも、人のためにやっているわけじゃなくて、まずは自分のため、家族のためにプレイしていました。それが人のためにもなっていた。でも、途中からは使命になって、そういう手紙をもらったら、この人たちのためにもやらなくちゃいけないなという思いを、心の中に置いてプレーしていたのは間違いないですね。いろいろ紆余曲折、アップダウンはあるけど、人生を豊かにしてくれたじゃないけど、大きくしてくれるものだったのかな。野球が与えてくれた力は大きい。だからこそ、野球は私の人生そのもの。当たり前なんだけど、ありきたりなんだけど、「人生そのもの」という表現が合っているのかなと思います。
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