「不器用で弱いからやらなきゃいかん」常に一番を目指してきた小笠原道大は、自分の弱さも率直に語る。やるべきことをすべて済ませてから帰る日々、先輩たちから学んだこと。
野球を続ける中で身につけた考え方には、仕事や日々の暮らしに重なるものがあった。

——野球を続ける中で、自分はこういう人間なんだと気づいたことは?
小笠原:負けず嫌いってことですかね。やっぱり一番でありたいし。高校時代も一番下から始まって、そこからレギュラーをつかまなきゃ先がないし、レギュラーをつかむだけじゃなくて、結果を出さなきゃいけない。その頃からずっと、そういう感じです。常にてっぺんを目指していました。プロに入っても、レギュラーを取りたい。レギュラーを取ったらタイトルを取りたい、いい仕事をしたいとか、何かしら常に一番を目指してやっていました。「こんなもんでいいや」というのはなかったですね。
——そのために、日々どんなことをしていましたか?
小笠原:プロになったら、野球がメインだから、全部やり終わってからプライベート、みたいな。遠征のときはホテルなので、外食したりするけど、治療とか全部終わってから出かけるので、みんなをいつも待たせてましたね。家に帰るのも全部やってから帰るんで、12時くらいに。そこから食事です。朝も早く行って準備して。全部が野球を中心に回っていた。後悔したくないから、やるべきことをやってやるという。自分が器用ではないから、やらなければいけない。器用だったら、多分こうなっていなかった。不器用だからやらなきゃいかんし、弱いから、逆に不安だからやっていた。強いんだけど、そこには弱さもあるから、強くならなくちゃいけない、という気持ちがあったのかなと思います。入り交じっていましたね、いろいろと。
——自分の弱さも受け入れていた?
小笠原:受け入れるというか、受け入れる前に、こうするために、こうやらなきゃいかんからと。弱いのはわかるけど、その上で「やる」ほうが勝つ。じゃあ、どうしていくか。それはもうやるしかない。そういう世界だから、やらなきゃ淘汰されるし、やったもの勝ちだと思っていました。
——考え方に影響を与えた先輩はいましたか?
小笠原:まだ若手だったころ、ひとりで黙々と走って、ひとりで黙々とやることをやっている先輩がいらして。「これぞプロ」という姿を目の前で見せてもらいました。自分の根底には、あの先輩から学んだ意識の持ち方があったから、長くユニフォームを着られたんだと思います。早い時期にそういう方に出会えたのは助かったなと。結局、自分の性格にも合っていた。節目、節目で、そういうふうにヒントをくれる先輩方がいましたね。自分だけで進んできたわけじゃなくて、運がいいというかね。分岐点で、こうだよと、背中で見せてくれるから、ああ、そうなんだと。目の前で見る、触れることによって感じる部分がある。自分が愚直にやっていると、認めてくれるじゃないけど、声をかけてくれたり、「食事行くぞ」となって、うれしくなって、またさらに頑張る。いい方向に流れていくわけです。

——ひとつのことを長く続けるのに、大切なことは何だと思いますか?
小笠原:まず、好きでいることじゃないですか。向上心を持って。好きだからこそ続けられるし、うまくいった時の喜びがある。それを求めるから続けられる、切磋琢磨していけるんじゃないかなと思うんですよね。途中でなかなかうまくいかないと思って投げ出してしまったら、終わってしまう。好きでい続けること。では、好きでいるにはどうしたらいいか。成功体験と、あとは、いろいろトライをして、つまずいて、考えて、またやっていく。その繰り返しを楽しめるか。そういう楽しみ方ができれば、継続できると思います。

——野球で身につけた考え方は、野球以外の人生にも生きていますか?
小笠原:最近、いろんな企業の社長さんとか会長さんと話したりしているけど、やっぱり一緒だなと。裸一貫で立ち上げた会社が大きくなっていくのと、意識というか、考えが一重なるなと思いました。ひとつのものを作ったり、築き上げたりするには、継続性とか根気が大事。土台がしっかりしていなければ長続きはしないし、しっかりした肉付けができない。表現が違えど、意味合いは一緒です。聞き手がそれを自分のワードに変えて落とし込んでいけば、当てはまることがたくさんある。野球で生きていく術を身につけたというのはあるのかな。野球人生においての、いろんな経験に基づいて、今も生きているし、それが今の人生にも全部つながっている。現場を離れたとしても、全部生きていますね。
つづく
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