「常に考える事が好きなんですよ、アトリエの家具の配置とか、壁の色とか」洋服以外の事を考える事が仕事をやる気にさせるスイッチだそうだ。
今回のショーは一ヶ月以上前から準備を進めていて8割から9割は準備が出来たので明日は楽しみたいですと言っていて、ショー当日に今日はどんな感じと聞いたら「味わった事の無い緊張感でヤバいです」とソワソワしていた。その理由は会場を見て、すぐに理解出来た。広さが2,000平米、高さ9m オブジェも6m×9m 観客席も600人以上入れる会場でファッションショーではあまり見た事の無い広さだった。
ライトのリハーサル、音楽のリハーサルが終わりモデルのリハーサルが始まった。今回はこの広い会場に負けない様にと41人のモデルを用意して、60体の洋服を見せるらしい。通常の倍の体数だ。
日本最後のショーと言い切るだけあって常識を超えたショーを目指しているのが伝わってくる。
リハーサルが終わりお客さんが会場へ入ってくる。平日にも関わらず600人以上のお客さんが見守る中ショーはスタートした。バックステージでモデルとモニターを見ながらショーの流れをみている寺田さんの顔に涙が少し溢れていた、その涙はフィナーレが近づく頃には大粒になり、こちらももらい泣きしてしまった。
観客に何度も頭を下げて挨拶する姿に、寺田さんの人柄が現れていて感動した。
フィナーレから帰ってきてスタッフと抱き合う姿はWBCの日本代表選手達に近いものがあった。自分の服をスタイリストさん、ヘアメイクさん、ショーの演出などのスタッフにすべて任せて信頼し進めている姿は本当に素晴らしかった。
ショーを終えた寺田さんに日本最後ショーはどうだったか聞いた。「自分の想像を遥かに超えていて、ショーをやって良かった、次へのステップになった」と言葉を詰まらせながら答えてくれた。近い将来、夢であるParisでのショーに近づいた瞬間に立ち会えた事に感謝し、寺田さんがParisでショーをする事になったら、また撮影しようと決めた瞬間でもあった。