シェフが選んだ料理はフランスの田舎でお母さん達が伝統的に作っているクネルだった。故郷郡山の鯉を使っての挑戦だった。徳島シェフも少年時代給食で鯉が出て来て、臭くてまずかった思い出があり最初はいいイメージが無かったが、地元の郡山の鯉の養殖場に行きイメージが変わった。水は綺麗で餌も丁寧に作られていて、鯉独特の臭さも無く、食材に使えると確信した。地元の食材を使って料理が出来る事を力に変え試行錯誤を繰り返してクネルを完成させた。

フレンチを作る現場を見たのは初めてだったが、時間のかかる料理だなぁと言うのが正直な感想だった。シェフも「フレンチは時間がかかって大変なんですよ、変わってくださいよ〜」と冗談を言いながらも「ただフレンチは時間をかけた分、料理が美味しく出来るんですよ、それがフレンチの魅力なんです。」フレンチの奥深さを感じる一言だった。 撮影から2時間半をかけてクネルが出来上がって来た。見た目から鯉の料理だとは想像のつかない形になり、凄く美味しい匂いがした。 完成したクネルを試食させて貰った。いい匂いと共に鯉の弾力が口の中で弾み、フゥワッと溶けていき味わった事の無い旨味が口の中で広がった。 シェフも地元の食材を使った料理をみんなに食べて欲しいと、メニュー化を進めると話していたので近い将来THE UPPERで食べれる事が楽しみだ。

【シェフ / 徳島亨】 福島県郡山市出身。 辻調理師専門学校卒業後、ホテルやビストロで研鑽を積み、2020年、東京・丸の内のコンテンポラリーレストラン「THE UPPER」のシェフに就任。2021年より、シーズナルコースのみを提供する新しい試みの店『NINE by La Cime』のシェフも務める。 日本ならではの食材を活かした独創的な料理で、日本のフランス料理を牽引。 2021年、日本最大級のフランス料理イベント「フランスレストランウィーク」のフォーカスシェフに選出、イベント特別コースのメイン料理に「鯉のパイ包み焼き」を提供し、好評を得る。 ■THE UPPER Webサイト：https://the-upper.jp/